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黒い小虫

朝の5時半におきて

小窓をあけて一服

黒い小虫が

サッシに挟まって


指でつまんで弾いたら

ソの♭の音にきこえた

そしたら急に

メロディが浮かんで

耳を塞いだ


頭の中をエレキがはしる

黒い小虫は羽音をたてて

不協和音をかなでて遊ぶ

部屋をとびだした


聞こえない

祈りも下卑た笑い声も

血管がつまって

どうしようもない

不安な夜のなかで

ふと思うよ


あの虫はどこへ向かうの


朝の5時半におきてみても

不安の種を摘み取る

作業に徹してる


昨日弾いた黒い小虫

サッシに挟まって

こっちを見てる

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