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エミリ


海の匂い

よく晴れた朝

ガラスの破片を手にとって

べっこう飴みたいだと

口の中に入れた


ひらり スカートめくれ

はらり 指の皮も

あぁ ぜんぶ 抱いて

きみは 踊る 踊る


目をつむりたいな

耳も塞ぎたいな

口は生暖かい

ねぇ 仰向けにして


べた塗りみたいな空

クリームパンみたいに

あっけなく千切れた

雲 雲 雲


もっと笑わせてよ


もっと聴かせてよ



ここはゼリーの海

クランベリー味の海

甘い 切ない 冷たい しょっぱいな

ぜんぶここにある


エミリ

また会おう


エミリ

またね




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