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クロール

曖昧だった

人の顔、話し方、笑い方

思い出せることは

白いシャツ、花模様のスカート


頼りない言葉

耳元で震えたの、正しく

忘れられないから、と

歌にしてきたの

いまさら


あの頃のようには飛べない

せめて淡水でクロールしても

ちっとも前に進めない

水の抵抗で


どんなに遠くにいっても

離したくないなんて嘯いて


勝手なことしてさ

人の気持ち乱してさ

それで向こう岸に行っちゃってさ


しがみついた

あの日追い越して

クロール、クロール、クロール

限界


都会に埋もれていた

本音たちが蠢いた

まるでウソみたいに

きみが好き、なんて

ウソつきめ


もう何にもいらない、と

欲深い顔した

二人の時間が急に恋しくてさ

タバコの吸い殻

つついて消えた


勝手なことしてさ

人の気持ち乱してさ

それで向こう岸に行っちゃってさ


しがみついた

あの日追い越して

クロール、クロール、クロール

もう


なんにも欲しくない、と

笑って灰になったって

きみがのこしてくれたものが

煌めいていた

それも、追い越して

クロール、クロール、クロール


もう限界

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